Lindy Coins – 初心者のためのTOP POP(最高鑑定)のみを扱う

【R4】イギリス 6ペンス|Spinkパターン(アルミニウム)|1887年|PF63|エッジ「MADE IN BAVARIA」刻銘|Top Pop(NGC唯一)

基本情報

発行地:ニュルンベルク(バイエルン)
年号:1887年
額面:6ペンス(Pattern)
品位:アルミニウム(Al)
重量:約0.76g
直径:約20mm
鑑定:NGC PF63(Top Pop)
文献:ESC 1781 note 1 / Bull 3307 note 8 / Bruce X55c

1887年、ヴィクトリア女王のゴールデン・ジュビリーを記念して制作された Spink & Son のパターン6ペンス。企画は英国バーミンガムのコインディーラー、ジョゼフ・ロシェル・トーマス(Joseph Rochelle Thomas, 1865–1938)の主導によるもので、実際の製作はドイツ・ニュルンベルクの名門ラウアー工房(L. C. Lauer)に委託されました。
このシリーズはクラウンから6ペンスまでの多額面で構成され、素材は金・銀・銅・錫・アルミニウムなど多岐にわたります。英国造幣局外で打刻された極めて珍しい試作貨であり、Spink & Son が国外工房に造幣を委託した数少ない事例として歴史的にも重要です。

本コインはその中でもアルミニウム製で、エッジに「MADE IN BAVARIA」の凹刻を持つ唯一確認された仕様です。この“Bavaria Edge”タイプは、Spinkパターン6ペンスの中でも突出した稀少性を誇り、文献 ESC 1781 note 1、Bull 3307 note 8、Bruce X55c のすべてにおいて R4(Extremely Rare=現存3〜5枚級)として明確に格付けされています。
つまり、文献上で「最上位の稀少段階」に位置づけられる個体であり、英国試作貨の体系においても最難関クラスの存在です。
現存確認例はわずか数枚に過ぎず、とくにエッジ刻印を伴うアルミ版は本品のみ。事実上の単独現存個体として世界的に認識されています。

鑑定面では、NGC PF63として唯一登録されており、同型の他個体は存在しません。
このため、NGC統計上で唯一の登録個体=Top Pop(最高位)に位置します。
文献上の“R4=極稀少”と鑑定上の“唯一存在(Top Pop)”という二重の希少性が重なり、現存貨幣の中でも群を抜いた特異的存在です。
さらに、アルミニウム製Spinkパターン群全体の製造数は約20枚前後と推定されており、そのうち「MADE IN BAVARIA」刻印を持つのは本品のみが確認されています。19世紀後半、英国とドイツが協働して生み出した技術実験貨の最高成果であり、R4格付けとTop Pop唯一性が交差する、Spinkパターン・シリーズの頂点的作品です。

─────────────────────────────

表面(オブバース)

肖像はジョゼフ・エドガー・ベーム(Joseph Edgar Boehm)によるジュビリー・ヘッド。
左向き三分の四姿の女王像が刻まれ、ティアラの宝飾、ヴェールの織り目、胸元の装飾が極めて精密に表現されています。
トランケーションはプレーンで、通常見られる「J.E.B.」「S&S」刻印を欠く初期仕様。
銘文「VICTORIA. BY. THE. GRACE. OF. GOD. QUEEN. OF. GREAT. BRITAIN. EMP: OF. INDIA」は二重線の内側に収められ、外周は均一なビーディングで額装されています。

POINTジョゼフ・エドガー・ベーム(Joseph Edgar Boehm, 1834–1890)は、オーストリア・ウィーン出身の彫刻家で、のちにイギリスへ帰化したヴィクトリア朝期を代表する肖像彫刻家。1887年に発行されたジュビリー・ヘッド(Jubilee Head)のデザインを手がけ、同女王の威厳と円熟を象徴する肖像として高く評価されました。王室御用彫刻家としても知られ、貨幣・メダル・王室胸像など多方面で英国美術界に大きな影響を与えました。

アルミニウム特有の明るい反射が鏡面フィールドを包み、PF63というグレードながら、打刻の均質さ・トーンの整い方はいずれも優秀。
金属表面には微細なダイ・ポリッシュが放射状に走り、光を受けた際の干渉反射(青白〜淡金色)が非常に美しい。
「英国的威厳」と「ドイツ的精密さ」が共存する完成度で、Spinkパターン6ペンスの中でも特筆すべき肖像面です。

─────────────────────────────

裏面(リバース)

中央にガーター勲章星章を背景とする四分割盾。
上にイングランド、右にスコットランド、下にアイルランド、左に再びイングランドの紋章が配置され、盾の間には王笏が交差し、その上に王冠を戴く兜とライオン・ユニコーンのサポーターが配されています。
外周銘文は「SIX PENCE」と「MDCCCLXXXVII(1887)」を備え、下部左右には“SPINK”および“& SON”の刻印。文字彫りは浅く繊細で、角度を変えると浮かび上がるように読めます。

とくに特徴的なのはエッジの「MADE IN BAVARIA」凹刻。
これはドイツ・ラウアー工房で製造された証であり、英国貨幣史上でも極めて珍しい国外製作の明記例です。
軽量なアルミ素材でありながら打刻は極めてシャープで、ビーディング、ガーター帯の文字(HONI SOIT QUI MAL Y PENSE)まで明瞭。
酸化被膜によるわずかな虹彩トーンが全体を包み、独特の柔光を放ちます。
試作貨幣でありながら、芸術的完成度の高さは実際の公式プルーフ貨にも比肩します。

─────────────────────────────
【歴史的背景】

1887年はヴィクトリア女王の即位50周年(ゴールデン・ジュビリー)にあたり、英国では王室の権威と産業技術を象徴する数多くの記念貨・試作貨が造られました。
Spink & Son はその中核的な役割を担い、英国バーミンガムのコインディーラーであったジョゼフ・ロシェル・トーマス(Joseph Rochelle Thomas, 1865–1938)の企画・監修のもと、ドイツ・ニュルンベルクの名門ラウアー工房(L. C. Lauer)に試作を委託しました。
ラウアー家は当時ヨーロッパ最大級のメダル製造所で、精密なダイ彫刻と鋳造技術を誇り、「MADE IN BAVARIA」の刻印はまさにこの国際的協業の証です。

アルミニウムは当時まだ“新金属”と呼ばれた革新的素材で、金や銀よりも高価に扱われていました。
19世紀後半の科学技術進歩を象徴するこの金属は、軽量で強く、銀に似た輝きを持つことから「未来の銀(the metal of the future)」とも呼ばれていました。
この素材を用いたパターン貨は、英国貨幣史上でも最初期のアルミニウム打刻例にあたり、ヴィクトリア時代の技術実験精神を体現しています。

本シリーズはクラウン、フローリン、シリング、6ペンスなど複数額面で展開され、各額面で異なるダイ構成やエッジ刻印を持ちます。
なかでも6ペンスは最小径ながら彫刻密度が極めて高く、クラウンやフローリンを凌ぐほどの精密な構図を示します。
王冠の珠、ガーター星章の刻線、そして国章を支えるライオンとユニコーンの立体造形まで、一切の省略がなく、アルミという柔らかい素材にこれほどの解像度で打刻された例は当時として異例でした。

このパターン・シリーズは王室や収集家向けにごく少数が制作されたもので、発行枚数はアルミ全バリエーションを通じても20枚前後と推定されます。
そのうち「MADE IN BAVARIA」刻印を持つものは現存唯一の確認例であり、文献上も R4(Extremely Rare=現存3〜5枚級)に格付け。
加えて NGC PF63 として唯一登録される Top Pop 個体であるため、文献上・鑑定上の両面からも極限的希少性を示す稀代の一枚といえます。

本コインは、ヴィクトリア期の産業技術・国際協業・芸術造形が一点に凝縮した「試作貨の頂点」であり、ジュビリー期の造幣史を語る上で不可欠な金属的遺産です。

─────────────────────────────
【市場評価と希少性】

本コインは、文献上 R4(Extremely Rare=現存3〜5枚級)に位置づけられる Spinkパターン6ペンスの中でも最上位の稀少変種「Bavaria Edge」タイプ。
しかもNGCでは PF63 として唯一登録されており、世界的に見ても同型の鑑定例は存在しません。
したがって、本品は NGC統計上の“唯一の登録例”であり、Top Pop(最高位)を占めます。

R4という文献上の極稀少指定と、鑑定上の唯一存在(Top Pop)が一致することで、「理論上・実証上の両面で唯一無二」といえる位置づけにあります。
アルミニウム製全バリエーションの推定総打刻数は約20枚前後とされ、そのうち「MADE IN BAVARIA」刻銘をもつものは本品1例のみ。
希少性、出自、保存状態の三拍子が完全に揃った標本です。

来歴は Thorburn Collection に属し、NGCラベルにも明記。
由来が明確である点も高く評価されます。

アルミという脆い素材で130年以上を経ても鏡面とレリーフを保つ本コインは、Spinkパターン・シリーズの中でも最も保存完璧かつ芸術性の高い個体の一つです。

─────────────────────────────

1887年 Spink & Son パターン6ペンス(アルミニウム “Bavaria Edge”)は、英国とドイツの造幣技術・芸術精神の融合を象徴する実験的名品です。
当時“未来の金属”と呼ばれたアルミニウムに、女王肖像の荘厳な彫刻と高精度のプルーフ仕上げが融合し、その軽やかな銀白色の輝きはヴィクトリア期の革新を映し出しています。
文献上は R4(Extremely Rare=極稀少)に格付けされ、現存がわずか数例に限られることが知られています。
さらに鑑定面では、NGCにおいて唯一登録された PF63=Top Pop(最高位)個体であり、文献上の「極稀少」と鑑定統計上の「唯一存在」が重なる、究極の一枚です。

ヴィクトリア期の技術革新と工芸的精緻さを体現したこの作品は、19世紀英国貨幣史における“孤高の実験成果”として位置づけられます。

関連商品

jaJA