Lindy Coins - nur TOP POP (höchste Einstufung) für Anfänger

オーストリア ターラー銀貨 フランツ1世(神聖ローマ皇帝フランツ2世) 1807年 ウィーン造幣局 NGC MS65 Top Pop

基本情報
発行地:オーストリア/ウィーン造幣局(A)
年 号:1807年
額 面:1ターラー(Taler)
品 位:銀(Ag 0.833)※ASW 0.7515oz
重 量:28.06g
直 径:40mm
鑑 定:NGC MS65(Top Pop/MS65は登録上本コインのみ)[Cert #3165946011]
文 献:KM2160

※来歴:Ex. Grundy(=グランディ・コレクション|Heritage Auction 3004, Lot 20198)/The Peh Family Collection 第2部(参考)

本コインは、1807年にウィーン造幣局で鋳造されたフランツ1世のターラー銀貨です。
※フランツ1世は神聖ローマ皇帝としては「フランツ2世」にあたり、1804年に創設されたオーストリア帝国の初代皇帝として即位し、1806年の神聖ローマ帝国解体後もその地位を保ち続けました。

肖像とレジェンドは縁いっぱいに広がり、直径40mmという堂々たるサイズをさらに大きく見せる迫力を備えています。表面はプルーフを思わせる強い光沢に包まれ、赤褐色とライム色が交錯するオリジナルのトーンが繊細なグラデーションを生み出しています。その色彩は柔らかな古色と鮮やかな輝きを併せ持ち、視覚的な迫力と優雅さを兼ね備えています。こうした造形と発色の妙は、当時の大型ターラーにおける芸術性の高さを如実に示すものです。

鑑定はNGC MS65で、登録上唯一のTop Pop(最高鑑定)という頂点の存在に位置づけられます(2025年9月時点)。
プルーフライクの艶と多色調のトーンは、同型の中でも比肩するものがなく、コレクターを魅了してやまない要素です。

さらに本品は、2009年1月Heritage Auction(セッション3004, Lot 20198)にて分散されたGrundy Collectionを経て、アジアを代表する名門 The Peh Family Collection「白家珍品集蔵系列」 に収蔵された来歴を有します。ヨーロッパとアジア、二大コレクションを継承したこの由緒は、単なる高鑑定を超えた歴史的・文化的価値を本コインに付与しています。

Grundy Collection

概要:Grundy Collectionは20世紀後半に形成され、21世紀初頭にかけて完成を見たヨーロッパ貨幣の名門コレクションのひとつです。
特にオーストリアや神聖ローマ帝国の大型銀貨を中心に構築され、その体系性と水準の高さで知られています。
評価:2009年1月、Heritage Auction(セッション3004)にて分散され、市場に大きな反響を呼びました。
本コイン(Lot 20198)はその出品物のひとつであり、選りすぐられた個体であったことの確かな証明となっています。

The Peh Family Collection「白家珍品集蔵系列」

ヘリテージ・オークションズは、Pehファミリー・コレクションをご紹介できることを光栄に思います。
このコレクションは、主要コレクターである Mr. Peh のビジョンと情熱を反映した、類まれなるアンティーク・コインの集大成です。

彼の歴史への強い関心は一貫しており、過去とつながる手段として貨幣学を追求することにつながりました。最初は母国であるシンガポール、海峡植民地、マラヤ、北ボルネオのコインに焦点を当てていましたが、その収集の野心はやがて地理的制約を超えて広がっていきました。芸術性と歴史的重要性への彼の洗練された鑑賞眼は、世界中から卓越した古代および近代の稀少コインを収集する原動力となりました。

Pehファミリー・コレクションを真に特別なものにしているのは、その広がりだけでなく、創造に込められた献身です。2004年から2014年にかけて、Mr. Pehは膨大な収集活動を行い、カタログや専門誌を読み込み、特に英国で開催されたオークションに足繁く通いました。膨大で羨望されるほどのコインを集めながらも、生前には一枚たりとも手放すことはなく、コレクション全体を家族に託して遺産としました。

その情熱については控えめかつ私的でしたが、今回の驚異的なコレクション公開を通じて、彼の影響力が明らかとなります。このコレクションは、彼の鋭い審美眼と卓越したキュレーション能力を示すだけでなく、一生涯にわたる探究心とコノサー(審美家)としての姿勢を物語っています。


表面(Obverse)

月桂冠を戴くフランツ1世の右向き胸像が中央に配されています。月桂冠は古代ローマ以来の勝利と栄光の象徴であり、ナポレオン戦争という動乱期における新皇帝の威厳を強調する意匠といえます。肖像は柔らかい陰影で刻まれ、やや理想化された横顔は新帝国の威信を象徴的に表現しています。

銘文「FRANCISCVS I. D. G. AVSTRIAE IMPERATOR」「神の恩寵によるオーストリア皇帝フランツ1世」を意味します。この表現は神聖ローマ帝国崩壊後における新しい正統性を主張するものであり、伝統的な宗教的正当性と近代国家としての権威を巧みに融合させています。縁いっぱいに刻まれた文字列は、直径40mmという堂々たるサイズをさらに強調し、見る者に強い印象を与えます。


裏面(Reverse)

裏面は、ハプスブルク家の大紋章を掲げる双頭の鷲を描いています。双頭の鷲は、東西を見据える普遍的な支配権の象徴であり、神聖ローマ帝国から継承された伝統的な帝権のモチーフです。その頭上には帝位を象徴する帝冠が戴かれ、胸部の盾には複雑に構成されたハプスブルク家の領邦紋章が集約されています。鷲の右爪には剣、左爪には宝珠を握らせ、武力と信仰の双方に基づく統治を表現しています。

銘文「HVN BOH GAL REX A. D. L. O. SAL. WIRC.」「ハンガリー・ボヘミア・ガリツィアの王、ならびにその他の領邦の支配者」を略記したもので、当時のオーストリア帝国が抱えていた広大かつ多民族的な領域を簡潔に示しています。これらの要素は、帝国の多様性と統合の理念を視覚的に伝えるものです。


歴史的意義
本コインは、ヨーロッパ史の転換点に位置する1807年に鋳造されたターラーであり、神聖ローマ帝国の終焉とオーストリア帝国の創設という二つの時代を橋渡しする歴史的証人です。

神聖ローマ皇帝フランツ2世は、ナポレオンの台頭による帝国の瓦解を目前に控えた1804年、自らの支配権を維持するためにオーストリア帝国を創設し、その初代皇帝フランツ1世に即位しました。そして1806年に神聖ローマ帝国が正式に解体された後も、新帝国の皇帝として君臨し続けます。
本コインが刻む「FRANCISCVS I. D. G. AVSTRIAE IMPERATOR」の銘文は、まさにその新しい帝位の正統性を世界に示すものでした。

一方で裏面には、双頭の鷲と帝冠という神聖ローマ帝国由来の象徴が残されており、旧秩序と新秩序の連続性を巧みに表現しています。鷲の胸に刻まれたハプスブルク家の大紋章は、ハンガリー・ボヘミア・ガリツィアをはじめとする広大な領土を包括し、多民族国家としてのオーストリア帝国の姿を体現しています。

このように本コインは、旧来の普遍的帝権の象徴と、新たな国民国家的権威の表明を兼ね備えた貨幣であり、ヨーロッパ近代史の「断絶と継承」を一枚に映し出した稀有な存在といえます。


市場評価と希少性

ターラーは当時の基軸銀貨として流通量自体は少なくありませんが、MS65という保存水準は極端に稀少。
本コインはTop Pop(MS65が1)のうえ、Ex. Grundy(Grundy Collection)/Peh Family Collectionという二大コレクション由来が重なることで、真正性・保存・選定眼の三拍子が揃った「特級」の評価を受けます。


総括

1807年のフランツ1世ターラーは、神聖ローマ帝国の終焉とオーストリア帝国の誕生というヨーロッパ史の大転換を物語る象徴的な貨幣です。神聖ローマ皇帝フランツ2世として最後の帝位を担い、オーストリア帝国の初代皇帝フランツ1世として新時代を切り拓いた彼の姿を刻む本コインは、まさに「二つの帝国の狭間」を体現しています。

縁まで迫る堂々たるデザインは直径40mmの迫力をさらに際立たせ、プルーフを思わせる光沢と、赤褐色とライム色が織りなすオリジナルのトーンが華やかさと深みを添えています。その視覚的な魅力は、単なる貨幣を超えて美術品としての価値をも備えています。

さらに本コインは、NGCにおいて唯一のTop Pop MS65という最高位の鑑定を得ており、現存する同型の中で比肩するもののない存在です。加えて、Ex. Grundy(=グランディ・コレクション)およびPehファミリー・コレクションという、いずれも国際的に名高いコレクションを経由した血統は、その真正性と保存環境の確かさを裏付けています。

こうした歴史的意義・芸術的美観・由緒ある血統・唯一無二のグレードを兼ね備えた本コインは、まさに「帝国の記念碑」と呼ぶにふさわしい逸品であり、オーストリア貨幣コレクションの頂点を象徴する存在といえるでしょう。

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