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ドイツ|ニュルンベルク自由都市|ヨーゼフ2世(1765–1790)ターラー銀貨|1767年|NGC MS65|Top Pop(最高位)

基本情報

発行地:神聖ローマ帝国 ニュルンベルク自由都市(Free Imperial City of Nuremberg)
発行年:1767年
発行者:ヨーゼフ2世(Joseph II, 1765–1790)名義
額面:ターラー(Thaler)
金属:銀(Ag)
直径:約41 mm
位置:12時打刻(Coin alignment)
文献番号:Dav. 2498 / Kellner 348
鑑定:NGC MS65(Cert. 6141332-020)=Top Pop(唯一または最高位)

1767年、神聖ローマ帝国の自由都市ニュルンベルク(Free Imperial City of Nuremberg)で発行されたターラー銀貨。
当時はマリア・テレジアと共同統治を行っていたヨーゼフ2世(在位1765–1790)の名義で鋳造され、帝国の威信と都市の自立精神が共存した「最終期の都市ターラー」にあたる。

文献は Dav.2498/Kellner 348 に記録される。
本コインは NGC にて MS65 として認定され、登録上は全世界でわずか2枚、そのうち本個体(Cert. 6141332-020)が最高位=Top Pop に位置する。
打刻の均質さ、光沢の深み、そして銀地を包む虹彩トーンの美しさが際立ち、ニュルンベルク造幣局の技術水準が到達点に達していたことを示す。
都市ターラーの芸術性と工学的精密さが融合した、18世紀造幣美の典型である。

表面(オブバース)

中央には神聖ローマ帝国の象徴である双頭の帝国鷲が翼を大きく広げ、両頭に王冠を戴く。
鷲の胸部には帝国の象徴「地球儀に十字(globus cruciger)」が置かれ、信仰と世俗の統合を示す。
両翼の間には王笏と剣が交差し、皇帝権の「正義」と「武威」の均衡を表している。
外周銘文「IOSEPHVS II. D. G. ROM. IMP. SEMP. AVG.」は “Iosephus II Dei Gratia Romanorum Imperator Semper Augustus” の略であり、
「神の恩寵による永遠のローマ皇帝ヨーゼフ二世」を意味する。
羽毛や宝飾の線刻は極めて繊細で、翼の陰影や胸部のレリーフの立ち上がりに至るまで、金型彫刻師の技量が遺憾なく発揮されている。
深く均一な打刻が金属に生気を与え、光の角度によっては翼の重なりが浮き上がるような立体感を見せる。
まさに帝国の威信を象徴する造形である。

裏面(リバース)

ロココ様式の優美な装飾フレームに囲まれたニュルンベルク市の紋章が中央に据えられる。
盾は斜めの帯模様(市章)を描き、周囲をアカンサスの葉飾りが包み、上部には都市の自治と誇りを象徴する王冠が置かれる。
外周にはラテン語銘文「MONETA REIPVBL. NORIMBERG.(ニュルンベルク共和国の貨幣)」が巡り、下部には「X E FEINE M.」の刻印が見える。

この略記は “X EINE FEINE MARK” の省略形で、「1科隆マルクの純銀から10枚のターラーを取る」ことを意味する。
すなわち、本貨が帝国標準に準拠した高純度銀(約0.900相当)で鋳造されたことを示す品位保証文であり、ニュルンベルク造幣局の誠実な造幣を象徴する印章でもある。
この表記は18世紀後半には徐々に省略されるため、1767年発行の本コインは「品質保証文を伴う最後期のターラー」としても重要な位置を占める。

銀面には淡く虹色を帯びたトーン(patine irisée)が広がり、光を受けて柔らかな干渉反射を見せる。
線の締まりと陰影の移ろいが美しく、金属的な冷光の中に温かみを帯びた輝きを宿している。
機械的精度と装飾的優雅さを両立した18世紀都市造幣の粋が、余すところなく凝縮されている。

歴史的背景

1767年のニュルンベルクは、名目上は皇帝権の下にありながら、実質的には独立した自由都市として高い自治を保持していた。
皇帝ヨーゼフ2世の名義で造幣が行われたのは、帝国への忠誠を形式的に示しつつも、都市経済を維持するための独自の政策的判断である。
このターラーの表裏構成(帝国鷲と市章)は、まさに「帝国への敬意と都市の自立」を同時に刻み込んだ象徴的デザインであり、自由都市ニュルンベルクが中世以来の伝統を最後まで守り抜こうとした姿勢を物語る。

ヨーゼフ2世は啓蒙専制君主として知られ、合理的な統治改革を進めたが、こうした都市ターラーの造幣は、帝国内での権威と自治の両立がまだ生きていた時代の名残でもある。ニュルンベルクの造幣はこの時期すでに成熟の域に達しており、純銀規格、刻印の精度、打刻圧、そしてレリーフの緻密さすべてにおいて、同時代のライプツィヒやフランクフルトを凌駕する完成度を誇った。

また、下部に刻まれる「X E FEINE M.」は帝国造幣法上の正統な品質保証文であり、都市の信義を担保するものであった。
この刻印が姿を消す18世紀末は、貨幣制度が統合へと移行する過渡期であり、本貨はその最終局面を象徴する資料的価値をもつ。

1806年、ナポレオン戦争の余波で神聖ローマ帝国が崩壊すると、ニュルンベルクは自由都市の地位を喪失し、バイエルン王国に編入される。
ゆえに1767年ターラーは、帝国と都市の二重構造がまだ息づいていた時代の「終焉前夜の自由都市造幣」を物語る歴史的証人である。

市場評価と希少性

文献上では特別なR区分は付与されていないが、実際には上位グレード個体の現存が非常に少ない。
NGC登録では全世界でわずか2枚、そのうち本個体が唯一のMS65=Top Pop に位置する。
市場で確認される個体は多くがAU〜MS61止まりで、完全未使用級に達する例はほとんど存在しない。

保存状態・打刻精度・光沢の三要素をすべて兼ね備えた標本は、都市ターラー全体の中でも指折りの完成度を示す。
その均整の取れた造形と、ニュルンベルク銀の典雅なトーンは、18世紀造幣技術の頂点を今に伝えるものである。

1767年ニュルンベルク・ターラーは、神聖ローマ帝国と自由都市の共存を象徴する“調和の貨幣”である。
双頭の帝国鷲と市章という二重の紋章構成に、当時の政治理念と都市誇りが凝縮されている。
X E FEINE M. の刻印が保証する正統な純度、ロココ期の装飾感、そしてMS65=Top Pop という到達点が重なり、歴史的・技術的・美術的の三要素を兼ね備えた、都市ターラーの完成形と呼ぶにふさわしい。

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