世界に2枚、頂点はこの1枚。NGC PF65 – Top Pop
1848年に試作された、英国史における最も象徴的なパターン銀貨の一つ。
中央にVR(Victoria Regina)の王室モノグラムを配した革新的な裏面意匠(Rev. Bii)は、通貨史上まれに見る美術的アプローチで、貨幣が単なる交換手段ではなく国家の象徴であり芸術作品であることを如実に物語ります。
表面には、英国王室彫刻師ウィリアム・ワイオンによるヴィクトリア女王の優美な横顔(Obv. C)を配し、深く磨き込まれた鏡面のフィールドに自然なトーンが浮かぶ逸品です。NGCによるPF65の評価を得ており、同一タイプは世界に2枚のみが認証済。
本品はその中でもTop Pop(最高評価)として王室貨幣史を飾る特別な存在であり、ハイエンドコレクター向けの至宝といえます。
表面(オブバース)
若きヴィクトリア女王の左向き肖像が描かれた端正な意匠。
本肖像は英国王室御用彫刻師ウィリアム・ワイオン(William Wyon RA)によるもので、極めて理想化されたクラシカルな顔立ち、精緻なヘアスタイル、そして凛とした横顔が特徴です。
首元には「W. WYON R.A.」の刻印が確認でき、彼の作品群の中でも最高傑作とされる「ヤング・ヘッド」シリーズの中でも、特に試鋳段階でのみ使用された貴重なバリエーションとされています。
周囲には「VICTORIA REGINA(女王ヴィクトリア)」の文字が刻まれ、1848年の年号は中央下に位置。打刻はシャープかつ均一で、光の角度によってトーニングの虹彩が浮かび上がります。Proofグレードならではの深い鏡面と、自然に経年したパトリナ(トーン)が共存し、NGC PF65の評価にふさわしい品格を備えています。
「R.A.」は王立芸術院会員(Royal Academy of Arts)の称号で、19世紀英国芸術界における最高位のひとつです。
英国王室の公式彫刻師(Chief Engraver to the Royal Mint)として活躍し、貨幣芸術の黄金時代を築いた巨匠Est.
裏面(リバース)
この試鋳貨を象徴する“Royal Cypher(王室モノグラム)”パターン。
中央にはヴィクトリア女王を象徴する大文字「V R(Victoria Regina)」が絡み合うように配置され、背景にはアザミ(スコットランド)、バラ(イングランド)、シャムロック(アイルランド)といった連合王国を象徴する植物文様が装飾的に描かれています。
これらの図柄は、伝統的な英国コインに見られる十字型デザインとは明確に一線を画しており、貨幣芸術としての挑戦が強くうかがえる構成です。外周には「ONE FLORIN ONE TENTH OF A POUND」の銘文が刻まれ、十進法導入の試みがデザインに反映されています。
なお、このRev. Biiパターンは発行されることなく終わったため、現存数は極めて限られています。NGCでは本Obv. C / Rev. Biiの組み合わせはわずか2枚のみが認証されており、本コインは最高評価のPF65(Top Pop)となっています。
その幻の意匠を、最高鑑定グレード「PF65」で現代に遺した本品は、コレクターの情熱と審美眼に応える一枚です。
現存わずか2枚、NGC公式登録において唯一のTop Pop。
それは、ただの銀貨ではなく、王室と時代と芸術が交差した「歴史そのもの」です。