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オーストリア ザルツブルク ターラー銀貨 ヨハン・エルンスト大司教 1694年 NGC MS64 | Top Pop

基本情報
発行地:オーストリア=ザルツブルク大司教領
年 号:1694年
額 面:ターラー(Thaler)銀貨
品 位:銀 0.875(17世紀ドイツ圏ターラーの標準的品位。DAV・KM参照)
重 量:約 28.9 g(ターラー規格。実測値はロットに 28.88 g 前後と記載あり)
直 径:約 40 mm
鑑 定:NGC MS64(Top Pop、Pop 2/2)
文 献:DAV-3510(参考:KM#350)

1694年にザルツブルク大司教領で鋳造されたターラー銀貨。発行権者は大司教 ヨハン・エルンスト・フォン・トゥーン・ウント・ホーエンシュタイン。本コインは DAV-3510 に分類され、NGC MS64 の鑑定を受けています。
特筆すべきは、NGCにおいて本コインが最高位グレード(MS64)で登録されており、現存わずか2枚のみ(Top Pop 2/2) という事実です。これ以上のグレードは存在せず、グローバル市場で見ても本コインが到達し得る最高峰の評価を得たターラー銀貨です。
The Peh Family Collection 由来としてHeritage Auctionsに出品された来歴も確かで、宗教都市国家ザルツブルクの威容を象徴するデザインとともに、鑑定的にも最上位に位置づけられるコレクション価値を備えています。


表面(オブバース)

冠を戴く聖母マリアが笏を持って座し、その膝には十字付宝珠を掲げる幼子キリストが描かれています。両者の背後には後光が輝き、宗教的威厳を強調しています。下部には大司教の紋章盾が大きく刻まれ、聖職者帽ガレロと房飾りが組み合わせられた典型的なカトリック高位聖職者の紋章構成を示しています。外周銘文「ARCHIEP·SAL· IO·ERNEST· D·G·」は「神の恩寵によるザルツブルク大司教ヨハン・エルンスト」を意味し、さらに内周には古代のマリア信仰祈文「SVB TVVM PRAESIDIVM CONFVG」(「あなたの御加護のもとにわれら避難す」)が記されています。信仰と統治の権威が重層的に表された意匠です。

意匠:聖母マリアと幼子キリストを戴く図像。下方には大司教の紋章(四分割盾)が大きく描かれ、その両脇に大司教の象徴である**ガレア(司教帽の房飾り)**が垂れ下がります。
銘文:ARCHIEPSAL SAL* IO.ERNEST. D. G.(=「神の恩寵によるザルツブルク大司教ヨハン・エルンスト」)。信仰と統治権を一体化させた宗教国家としての権威を刻んでいます。


裏面(リバース)

ザルツブルクの守護聖人である聖ルペルト(Rudbertus)が立像で表現され、右手に司牧杖、左手に塩桶を持っています。これは同地の経済基盤であった塩交易の繁栄を象徴する特有のアトリビュートです。足元には大司教領の紋章盾が配され、宗教権威と世俗統治の両面を示しています。周囲銘文「EP·SALISBVRG·1694 · S·RVDBERTVS·」は「聖ルペルト、ザルツブルクの司教、1694年」を意味し、星形の区切り記号を挟みつつ、ラテン語の伝統的綴り(V=U)で刻まれています。荘厳な司教装束や塩桶、クロージャの細部まで緻密に刻まれ、バロック後期のターラー貨に特有の重厚な造形美を体現しています。

意匠:聖ルペルト(St. Rupertus of Salzburg)像。右手に司牧杖、左手に塩の桶を持つ姿は、塩の交易で繁栄したザルツブルクを象徴します。足元には大司教領の紋章盾が配置。
銘文:EP* SALISBVRG* 1694 S. RVDBERTVS(=「ザルツブルクの司教、聖ルペルト、1694年」)。

歴史的背景

俗領主としての統治権を行使しました(=“大司教=君主”という二重の役割)。この政治体制は1803年の世俗化まで続きます。
本コインの発行者である ヨハン・エルンスト・フォン・トゥーン・ウント・ホーエンシュタイン1687–1709年にザルツブルク大司教を務め、都市整備・教会建築の推進で知られます。ザルツブルクのバロック都市景観は、彼を含む諸大司教の施策により17–18世紀にかけて形成されました。
経済面では、地名の由来でもあるが中世以来の基盤で、塩鉱・塩交易がもたらす収入が大司教領の財政を支えました。16–17世紀にはその富が公共建築や宗教施設の整備にも投じられ、今日の景観形成に大きく寄与しています。
コインの図像はこうした実情と密接に結びつきます。表面の聖母子像の周囲には、古いマリア崇敬の祈り Sub tuum praesidium confugimus(「あなたの御加護のもとにわれら避難す」)の一節が刻まれる版が知られ、マリア信心を前面に出す大司教領の理念を反映します。裏面の守護聖人 聖ルペルト(Rudbertus/Rupertus) は、伝統的に塩桶と司牧杖を持つ姿で表され、塩による繁栄という地域アイデンティティを象徴します。

以上のように、1694年ターラーは宗教権威(聖母子・祈文)と世俗的繁栄(聖ルペルトの塩桶)を同時に語る媒体として位置づけられ、バロック都市国家ザルツブルクの政治・経済・信仰が一枚の大型銀貨に凝縮されています。


市場評価と希少性

カタログ番号:DAV-3510
グレード:NGC MS64(The Peh Family Collection 出品)
位置づけ:ターラー銀貨は17世紀神聖ローマ帝国経済の基盤通貨であり、同時に大司教領の威信を示すメダリックな作品。
本コインは保存状態がきわめて良好で、当時の鋳造技術と宗教的美学を今に伝えています。


総括

1694年のザルツブルク大司教領ターラー(DAV-3510)は、聖界侯国=宗教権威と世俗統治が併存する体制を一枚で語る代表的タイプです。
表面の聖母子とラテン祈文 SVB TVVM PRAESIDIVM CONFVG、裏面の守護聖人ルペルト(塩桶と司牧杖)という組み合わせは、信仰の守護と塩交易による繁栄というザルツブルクの実像を的確に象徴します。
本コインは NGC MS64 の鑑定で、NGCポピュレーションでは当該銘柄の最高位(Top Pop, Pop 2/2/これ以上のグレード登録なし)。R指定の稀少等級は一般的に付与されないタイプであるため、価値の核は完成度の高い意匠と、当個体が到達した保存水準にあります。
The Peh Family Collection 由来という来歴の明確さも好材料。
総じて、1694年ザルツブルク・ターラーの中でも鑑定的頂点に位置づけられるコレクション向けの上位個体であり、バロック期の宗教都市国家が体現した美学と統治思想を、鮮明に伝える一枚です。

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