1848年 ヴィクトリア 女王 銀型見本「One Centum(センタム)」
NGC社鑑定で、総鑑定枚数5枚、最高鑑定1枚のそのコイン!!
本コインの1848年のヴィクトリア女王の銀型見本「One Centum(センタム)」は、流通用ではなく、デザインのテストのために鋳造された非常に希少なコインです。NGCにより「Proof 66+」※のグレードが与えられ、極めて素晴らしい保存状態が確認されています。
コインはその美しさと保存状態で高い評価を受け、オークション市場でも注目されています。
※「+(プラス)」は、通常の「PF 66」よりも一段階優れた品質であることを示す記号です。
NGCでは、グレードがあとわずかで次のランクに達する非常に優れた個体に対して「+」マークを付与しています。
本コイン「PF 66+」
通常のPF 66より目立つ傷がさらに少なく、
表面の鏡面仕上げや艶、打刻のシャープさなどが際立っており、
状態としては PF 67 に極めて近い品質 にあることを意味します。
この「+」が付くことで、コインは同じ66評価の中でも特別に優れた1枚として市場価値が高まります。
表面(オブバース)
デザイン:若きヴィクトリア女王の左向き肖像が描かれています。
女王は月桂冠を戴いた「laureate」姿で、髪を後ろで束ねた通称「バンヘッド(bun head)」のデザインです。
肖像は当時のイギリス硬貨の肖像彫刻を手掛けたウィリアム・ワイオン(William Wyon)による繊細な作品であり、女王の称号「VICTORIA REGINA(ヴィクトリア女王)」と年号が周囲に刻まれていました(ただしこの型見本コインでは「DEI GRATIA(神の恩寵によって)」などの文言が意図的に省略されています。
裏面(リバース)
デザイン:ヴィクトリア女王のモノグラム「VR」(Victoria Reginaの略号)を中心に据え、その周囲をイギリスの国花・国章であるバラ(イングランド)、アザミ(スコットランド)、シャムロック(三つ葉のクローバー:アイルランド)の3種が絡み合うように配置しています。
さらにその下部にはプリンス・オブ・ウェールズの羽根(3本の羽根飾り)があしらわれています。
全体の構図は四つ葉形(クアトレフォイル)の枠取りの中に収められており、非常に凝った意匠です。
刻印:裏面上部には「ONE CENTUM」、下部には「ONE TENTH OF A POUND」と刻まれ、このコインの額面価値が「1センタム=1ポンドの1/10」であることを明示しています。これらの要素はそれぞれ象徴的意味を持ち、VRは女王自身、バラ・アザミ・シャムロックは連合王国の各地域、プリンス・オブ・ウェールズの羽根はしばしば忘れられがちなウェールズを代表する紋章として機能し、英国全体の統一を表現しています。
パターンコイン(型見本)」としての歴史的背景と目的
1848年のこの2シリング銀貨は正式発行に先立ち試作されたパターンコイン(型見本硬貨)です。
2シリング硬貨(フローリン)を1ポンドの1/10と位置付けることで、将来的に1ポンド=10フローリンとする十進法への第一歩とする狙いがあったとされます。実際、1849年にはこの試作を元にしたフローリン銀貨が発行され、英国で約200年ぶりに新たな単位の硬貨が登場しました。
この1848年の試作硬貨は、そうした通貨十進化のデザイン・技術試行の一環として製造されました。ロイヤルミント(英国王立造幣局)の主席彫刻師ウィリアム・ワイオンが中心となり、新しい2シリング硬貨のデザインを検討するために複数の試作品が制作されています。その目的は、硬貨の図案(女王肖像の表現や額面表示方法)および標題(通貨単位名称)について様々な案を比較検討することにありました。本コインはその中でも額面単位を「Centum(センタム)」と表示したパターンで、十進化試案の一つでした。このような型見本硬貨は一般流通を目的とせず、造幣局内部や政府高官への提示用、あるいは特別収集家向けにごく少数が製造されるもので、最終決定に向けた評価・検討材料となりました。
最終的には「フローリン(Florin)」という伝統的名称が採用され、1849年に発行された新2シリング銀貨の正式名称となります。
本コインは、ヴィクトリア朝後期における貨幣制度改革の試みを物語る歴史的資料であり、その製造目的は新貨幣導入のための試験であったと言えます。