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イギリス ゴシックフローリン銀貨 ヴィクトリア女王 | ウィリアム・ワイオン 1871年 NGC PF64+

基本情報

発行国:インド(英領インド/イギリス東インド会社)
発行年:1871
額 面:フローリン(2シリング、1/10ポンド)
品 位:銀(91.7% / .917 Silver)
重 さ:約11.31 g
直 径:約26 mm
鑑 定:NGC PF64+(証明番号 6767420-016)
カタログ:S.3893 / Bull 2875 / ESC 838
[特記事項]
コインNo.43打刻
トップポップ(唯一のPF64+鑑定品)

本コインは、ヴィクトリア朝時代の偉大な彫刻家 ウィリアム・ワイオン (W. WYON R.A.) の手によるものです。表面にはゴシック調の書体で「VICTORIA D: G: BRITT: REG: F: D:」と刻まれ、荘厳で優雅な王冠を戴くヴィクトリア女王の左向き肖像が浮かび上がります。女王の衣装のレース細工や王冠の装飾は、眺めるほどにその緻密さに驚嘆します。
裏面の意匠は、イングランド(3頭のライオン)、スコットランド(獅子の盾)、アイルランド(ハープ)といった英国を構成する国々の紋章を、ゴシック様式の美しい十字構図で配置しています。その周囲に咲くバラ、アザミ、シャムロックの花が、連合王国の一体感を象徴しています。

歴史的背景と国際通貨構想

19世紀半ば、英国は国際貿易の拡大と通貨制度の近代化を強く意識していました。特にフランスのナポレオン3世による「ラテン通貨同盟」の影響を受け、十進法に基づく通貨単位の導入が検討されていたのです。
この1871年のゴシックフローリンはその一環で、1フローリン=1/10ポンドという明快な額面表示がその意図を物語っています。英国が欧州諸国に対し「経済・金融面でのリーダーシップ」を誇示するために制作された象徴的な銀貨と言えるでしょう。

ラテン通貨同盟は、1865年にフランス、ベルギー、イタリア、スイス が主導して設立した国際的な通貨協定です。後にギリシャなども加盟しました。
目的は、統一規格の金・銀貨を発行し、国境を越えて相互に通用させること にありました。これにより、複数の国の硬貨がほぼ同じ重さ・純度で鋳造され、貿易や旅行での利便性が高まりました。イギリスはラテン通貨同盟には加盟しませんでしたが、その影響は受けており、十進法通貨や国際通貨の統一規格化への関心を高めるきっかけとなりました。1871年のゴシックフローリン(1/10ポンド表記)は、こうした「国際通貨制度への英国の対抗的メッセージ」や「十進法通貨の可能性を探る試み」の一環だったのです。

プルーフ仕様の稀少性

本コインは「フランブリューニ(PROOF)」仕様、つまり見本・試作として特別に磨かれた鏡面仕上げの銀貨です。
さらに NGC PF64+(証明番号 6767420-016) という高鑑定評価を得ており、このグレードで認定されたものは世界で本品ただ1枚の「トップ・オブ・ポップ」です。アンソニー・ド・フランクリンによるコレクションなど、19世紀の通貨試作・国際展示会用コインは、ごく限られた数が存在するのみで、マーケットに登場する機会はほとんどありません。

コレクション・投資価値

ゴシックフローリンのプルーフ仕様は、その華麗なデザインと希少性により、世界のハイエンドコレクターや博物館級コレクションの中核として高く評価されています。さらに、通貨制度史・国際経済史を背景とした深いストーリー性を持つことから、単なる銀貨を超えた文化財的価値を有します。
市場ではプルーフゴシックフローリンの上位鑑定品が取引される例は極めてまれであり、本品のように 唯一のPF64+ とされるものは、将来的な資産的価値の維持・向上も期待されます。

表面(オブバース)

表面には、ウィリアム・ワイオンによる精緻なヴィクトリア女王の左向き肖像が描かれています。王冠はゴシック様式の豪奢なデザインで、繊細なレースのドレスや宝飾のディテールは、プルーフコインならではの深い陰影と美しい彫りが際立ちます。
周囲の伝説(銘文)は以下の通りです。
「VICTORIA D:G: BRITT: REG: F:D:」
これは「Victoria Dei Gratia Britanniarum Regina Fidei Defensor」(神の恩寵による大英帝国の女王、信仰の守護者)を意味します。
また、ヴィクトリア女王の胸元下に「WW」(ウィリアム・ワイオンのイニシャル)、さらにこのコイン固有の打刻番号「43」※が刻まれています。

※打刻番号「43」は、このコインが特定の打刻用ダイ(刻印)または特別製造シーケンスにおける43番目の個体であること を示しています。これは特別鋳造プルーフ貨の一環として厳密な管理のもとで製造されたことを示すものです。王室工房の高精度鋳造技術、限定的生産背景、歴史的価値の高さを物語る重要な証左です。

裏面(リバース)

裏面は、英国連合王国を象徴する4つの王国の紋章が十字状に配置されています。中央には精美なゴシック調の花飾りのクロス。
各盾の意匠は以下の通りです

イングランド:3頭の獅子
スコットランド:立ち上がる獅子
アイルランド:ハープ
ウェールズは盾には含まれず、周囲の花飾り(バラ、アザミ、シャムロック)で連合を象徴

周囲には以下の文字が刻まれています。
「ONE FLORIN ONE TENTH OF A POUND」
フローリンが1/10ポンドであることを明示し、十進制度通貨の啓蒙的側面を示しています。

本コインは、ヴィクトリア朝英国が誇る彫刻技術の粋を集めたもので、王権の権威と統一王国の誇り、そして国際通貨制度への意欲を象徴しています。ゴシック様式の荘厳な意匠は、欧州各国の展示会や王室公式行事での誇示目的でも用いられました。ゴシックフローリン銀貨は、まさに「芸術と歴史を掌中に収める一枚」。ヴィクトリア朝英国の精神を映す傑作です。NGC PF64+ の唯一の鑑定品という点も、コレクションの価値を一層引き立てています。
コインの表・裏いずれをとっても、彫刻技術と歴史的背景が融合した、世界に誇る至宝です。

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