若き女王が戴く月桂冠 〜十進制度への序章となった幻の銀貨〜
栄光あるヴィクトリア時代に鋳造された、幻のパターン銀貨でありその最高峰。
本品は1848年に製作された、イギリス王立造幣局による2シリングのパターン(試鋳貨)。
その中でも本品は、月桂冠を戴いたヴィクトリア女王の特別な意匠を採用した稀少なパターンコイン。
磨き抜かれた鏡面のプルーフ仕上げに、荘厳な横顔が浮かび上がる一枚。
NGC PF64、Top Pop 3枚の内の1枚として、名実ともにこのシリーズの頂点に立つ逸品。
Surface (obverse).
若きヴィクトリア女王が、威厳を湛えた横顔で中央に描かれています。
月桂冠(ローリエ)を戴いた特別な肖像であり、勝利・名誉・知性を象徴するローマ風のスタイルが採用されています。
銘文には「VICTORIA REGINA」、下部に年号「1848」が刻まれており、外周のビーズ状の縁取りがデザイン全体を引き締めています。
19世紀英国王室の品格が表現されたデザインとなっています。
また、左上部に鋳型起因と思われる(Die Break)が確認でき、鋳造当時の工程的痕跡として、歴史的な証拠価値を持つディテールでもあります。
この「月桂冠タイプ」は数ある試鋳パターンの中でも極めて珍しく、芸術性と象徴性を兼ね備えた肖像として、コレクターから高く評価されています。
Reverse (reverse)
“ONE DECADE” 十進制度導入の象徴
裏面には中央に【ONE DECADE】と大きく刻まれ、その上下には
上部:「100 MILLES」
下部:「ONE TENTH OF A POUND」
という十進制度の単位が明記されています。
全体を囲むように、オークと月桂の葉によるリース装飾が精緻に彫刻され、下部には三叉槍(トライデント)が添えられています。
これはイギリスが誇る海洋国家としての象徴でもあり、この1枚が国家理念を強く反映して設計されたことが分かります。
1849年以降に正式導入されたフローリン銀貨の礎となる思想が、この試鋳貨に刻まれているのです。